今は本を読むことぐらい

本のある充実した時間 でもそれだけでは物足りない

「回転寿司の経営学」

「回転寿司の経営学

米川 伸生著  東洋経済新報社  2011年

 

 

 回転寿司。

 登場当時の安かろう悪かろうというイメージから脱却して市民権を得た業態。もちろんつけ場の職人によって握られる鮨とは大きな違いがあるものの、価格と味の一つのスタンダードを作って来たのではなかろうか。

 

  この本では回転寿司の歴史の解説から始まる。大阪の元禄寿司が発祥で、その後全国に広まったこと。回転寿司のコンベアを作る会社(シェア№1)が北陸にあるためこの地方では良い意味での競争が行われており、回転寿司としては全国的に評判が高いこと。増大する需要に対するすし職人の不足に対応するために機械化による省力化が早くから進められてきたことなどが語られる。

 

 少し古い本なので、データなども10年前ぐらいまでのものしかないが、それでも黎明期からの各チェーンの栄枯盛衰を見ることができるし、100円寿司チェーン同士はもとより少し高級なグルメ系回転寿司との攻防などもさらりと述べられている以上のものがあったに違いない。

 

 著者は「回転寿司評論家」を称して日々回転寿司を食べ歩いているような方で、タイトルには「経営学」と入っているものの本書にはいわゆる経営学の事は書かれていない。出版元が東洋経済新報社というのに首をかしげてしまうが、気楽に回転寿司業界の盛衰を読むにはよいかもしれない。

 

 回転寿司は100円系の「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」等の大手がしのぎを削っているが、これからも継続していけるのだろうか? 100円寿司チェーンといえども1貫で100円とか3貫で200円といった従来の2貫100円均一から外れた商品(やや質の高いネタ)を提供するとともに、ラーメンやカレーなど寿司以外の(おそらく)利益率の高い商品を提供するようになってきている。これは客層の拡大が期待される半面、店舗オペレーションの複雑さを招くことになるし、寿司ネタ(2貫100円レベル)での差別化が難しくなっている証左なのだろう。寿司も食べれるファミリーレストラン化に舵を切っているような印象である。さて10年後はどうなっている?