今は本を読むことぐらい

本のある充実した時間 でもそれだけでは物足りない

「スローライフの停留所-本屋であったり図書館であったり」

スローライフの停留所-本屋であったり図書館であったり」

内野安彦著  郵研社  2018年

 

 

 本書は公務員として図書館関係の仕事をこなしてきた著者がアーリーリタイヤし、その後の仕事や生活のことを書き綴ったものである。

 

 スローライフと聞いてどのようなものを思い浮かべるだろうか。俗世間を離れて(必ずしも人里離れたところに引っ込むというわけではない)、自分のペースで生活を送る。波長の合うヒトと付き合い、仕事をしていた時の緊張やストレスから解放された毎日。ゆっくりと流れる時間の中で、趣味や楽しみ事に夢中になる。私の考えるスローライフとはこういうものだが、ちょっと飛躍・浮世離れ・理想化しすぎか?

 

 上記のようなことを思い浮かべながら読み進めていくと、その勝手な思い込みと様相が異なることに気づく。著者は公務員をリタイヤしているが、フリーランスとして講演や研修、大学の非常勤講師、はたまた執筆活動等などで忙しく日々を過ごしている。また、本書の端々にどうにも自己顕示欲的なものが頻出し、浮世離れした感じなど微塵もない。まあスローライフといっても人それぞれとらえ方が違うと思うが、老後を有意義に過ごしていくためのヒント、という本書の触れ込みに納得できる人はどのくらいいるのだろうか? 著者のケースはやや特殊であり、これを一般化するのには無理があるように感じる。が、私も筆者のようにほどほどに忙しい第2・第3の人生を送りたいと考えていて、現在色々と妄想中である。

 

 スローライフ云々はさておき、本がもつ「文化」を全国あまねく届けるために図書館が担うべき役割や紋切り型ではなく特色のある図書館づくりなどの指摘は図書館員(運営組織側の人)と図書館人(利用する側の人)の双方を経験した著者ならではであろう。公立の図書館には本が好きな人が運営側にいるとは限らないという現実に頭を抱えるばかりでなく、今後の選書・運営のセンス向上に期待していきたいところである。

 

 図書館では利用率向上ひいては満足度向上が求められている中で、蔵書のラインナップ(例えば新刊の同一タイトルの複数購入)に対しては出版不況の一因として出版業界に影響を及ぼしていると批判が出たり、文庫本の貸し出し中止を求められたりと、なかなか四方丸くやっていくには難しい時代になってきたようだ。利用者としては何でも揃う図書館が理想であるが、予算の関係上そうもいくまい。それぞれが上手く特色を出して、地域社会での読書や調べ物に役立つ図書館とはどのようなものが理想であろうか?