今は本を読むことぐらい

本のある充実した時間 でもそれだけでは物足りない

「サハラ砂漠 塩の道を行く」

サハラ砂漠 塩の道を行く」

片平 孝著  集英社新書ヴィジュアル版  2017年

 

 

 Google mapでマリ共和国の首都バマコを調べてほしい。そこから北東約1,000キロのRN33号線沿いに今回の旅の出発地トンブクトゥがある。砂漠の交易都市として栄えた有名な都市らしく息子はここを知っていた(私は初耳だった。恥)。そこから真北に約750キロの砂漠の中に目的地タウデニ岩塩鉱山がある。ぜひ衛星写真トンブクトゥ‐タウデニ間の砂漠を見てもらいたい。そして茫漠とした茶色の砂の大地の中にポツンとあるタウデニの干上がった塩湖の白さを。

 

 本書は塩の交易に魅せられた著者が古くから続くサハラ砂漠の隊商による塩の運搬ルートを踏破した紀行記。自らラクダのキャラバンを仕立て、2人の現地案内人と3人で広大なサハラ砂漠に足を踏み出す。片道約750キロ。往復で40日余り。砂漠特有の極端な昼夜の温度差。一日あたり13時間の行軍。襲撃への警戒。水や食料の欠乏。アクシデント。鮮明な写真とともに日本の国土とは全くかけ離れた環境での旅が綴られている。

 

 この記録は2003年のもので、15年も経ってからの書籍化の経緯は不明ながら、せっかくの行程が淡泊に描写されているため非日常感、過酷感などの臨場性がやや薄めな印象。また、編集や製本の事情もあるのだろうが、今回のような紀行記では一枚の写真が何ページもの文章に匹敵あるいはそれ以上の情報を第三者に伝えることができるはず。それらの写真がもっと掲載されていれば、もっと鮮烈な印象を読者に与えたに違いない。

 

 ともあれ、著者の長年の希望として温めてきた今回のキャラバン紀行。結果として60歳にしてサハラ砂漠を1か月以上もかけて旅をする(しかも徒歩とラクダに揺られて)ことになり、その行動力に感服するばかりである。最近のニュースでは三浦雄一郎氏が齢86にして高山(アコンガグア)のアタックを予定していると聞く。私もこのようなバイタリティを見習わなければなるまい。まあ、とても真似は出来ないけど、家にいるだけでは何も始まらない。